「ひかりね、スタバでコーヒーを飲みながら本を読むのに憧れているんだ」
娘がそうつぶやきました。
この「憧れる」という言葉。平安時代には既に使われていました。当時は「あくがる」という動詞の形で、「ふらふらとさまよう」という意味で用いられることが多かったのですが、陰陽道の思想が入ってきた頃から、
「魂が体からさまよい出る」という意味合いに変わっていきました。
時の流れとともに、さらに少しずつニュアンスを変え、江戸時代には「心が強く惹かれる」という、現代の意味に近くなります。「あくがる」が「あこがれ」と名詞化して定着し始めたのもこの頃です。
我が身から魂が彷徨い出てしまうほどの思い。
「憧れ」というのは、もともとそんな強さを秘めた言葉でした。
私は言葉フェチなので、言葉や文章には「温度」のような、「オーラ」のようなものがあると信じています。「憧れ」という言葉は「透き通った濃い赤」のイメージです。
娘が口にするスタバへの「憧れ」は、原義よりずっとライトな、薄いピンク色かな(笑)。