穴があったら入りたい…。
まさにそんな気分でした。
ひかりをダンナの実家に預けるために乗った地下鉄車内でのこと。
「あむあむあむあむあむ」
突然響く、ひかりの大きな声。
何か食べているかのように、口を動かしています。…隣に座っているおじいさんを凝視しながら。
…ひかり。
そのおじいさんは何も食べていないんだよ。入れ歯をモゴモゴしているだけだよ。真似をするのはやめなさい
失礼な行動に焦る私。
隣のおじいさんは目をつぶり、ひたすら口を動かし続けています。
「このおじいちゃんは、おもしろいことをする」
とでも判断したのでしょうか。
ひかりはおじいさんの動きに釘付けです
突如、ティッシュをポケットから取り出し、
「カァ~ッ!!」と痰を切るおじいさん。
その途端、ひかりの笑いスイッチが入りました。
「ひっひっひっひっ!きーっ!!」
何がそんなに可笑しいのか、おじいさんを見て笑いはじめます。
ひかり誕生史上、一番の大爆笑です。
そんな彼女など目もくれず、おじいさんはまた痰を切りました。
「カァ~ッ!!ぺっ!」
「きっきっきっき、あ~っ!!」
体をのけ反らせて笑うひかり。
笑い声が昼下がりの車内に響き渡ります。
乗客たちの視線、視線、視線。
向かいのおばさまペアなんて、ハンカチで口を押さえてつられ笑いしています。
…あのさ、ひかり。
もうそのへんにしておこうか
ねっ、お願い!!!