塾長ブログ

聴く力を磨く その4 ~聴くことって簡単じゃない

前回の続きです。


私たちは、お店の女の子たちに「聴く力」を磨くための研修を始めることにしました。


まずは、聴く力のレベルとして大きく二つに分けてみたのです。

1 相手の話を正確に聞きとめる力をつけること。

2 相手が気持ち良く話せるような態度で話が聴けること。


一度に2つのポイントを体得してもらうのは難しいので、最初に「1 相手の話を正確に聞きとめる力をつけること」を練習してもらうことにしました。


この、「相手の話を正確に聞く」ということは決して簡単ではありません。

話をしっかりと聞けるだけの「集中力」や「相手への思い(関心・興味・愛情・尊敬…)」が少なからず必要だからです。


ちょっと考えてみてください。

自分が現在、大きな悩み事や悲しみなどを抱えている状況にいるとします。

そんな中で、あなたは人の話を集中して聴けるでしょうか??


…話は逸れますが、私は先月末に最愛の母を失いました。

入院をしていたわけでもなく、その日の朝まで一緒にウォーキングに行った母が、突然脳出血で急逝したのです。私たち家族はショックで、眠ることも食べることもしばらくは出来ませんでした。


そんな中、長女の私は葬儀会社の方にお葬式の手続き・進行の関係で色々とご指示を頂いたのですが、一度で話が理解できないことばかりでしたあせる

普段なら、注意深く話が聴けると自負している私でも、突然の母の死という大きな喪失感を胸に抱えている状況で、相手の話を集中して聴くことは到底できなかったです。



ここまで極端ではなくても、大きな不安や悲しみなどのストレスを胸に抱えている状態では、相手の話を全力で聴くのは難しいのが人間なのではないでしょうか。

人の話をしっかり集中して聴くためには、まず自分の心に、ある程度の余裕がないとダメだと思うのです。


クラブで働く女の子たちは、色々な事情を抱えています。

妹のお店のスタッフたちもそうでした。


1人で子供を育てていたり、彼氏が残した多額の借金を返済していたり。

夜昼逆転した生活も拍車をかけているのか、ウツ症やパニック症候群の子もいました。

自分のメンタルを強く持つことは、そう簡単なことではありません。


でも、どんなにプライベートが辛い状況でも、仕事が始まったら「集中のスイッチ」をオンにできるような精神状態に自分を持っていけるかが勝負です。


妹と私は何度も話し合いました。


と言ってもさ、悩みや不安、ストレスを全く感じない人もどうかと思うよね。

そんな思いを抱えた経験があるからこそ、人の痛みも理解できるんじゃないかなぁ。

苦しみや辛さを知っているうちの子たちには、「傾聴」の素質があるよね。


「集中のスイッチ」をオンにする力を身に付ける。

それを本人にだけ任せるのは難しいことだよね。時間もかかりそうだし。


オンにしやすい職場環境を演出したり、

オンにせざるを得ない状況を作ったり、

仕事をする上でのモチベーションを上げたり…

それは雇用する側である私たちの義務なんじゃないかな?



「改善ミーティング」の初日、私たちは女の子たちを集めて言いました。


「皆さんには今後『聴く力』を身に付けてもらいます。

お客様の話を注意深く聴くことを今後練習してもらいたいのです。


話を聴くということは、皆さんが思っている以上に簡単なことではありません。

そして皆さんが思っている以上に、あなた方にとってこれからも役立つ力です。

まず、今日からやってもらいたいのは…」


最初の段階の「相手の話を正確に聞きとめる力をつけること」を実践練習するために。

そして、スタッフの集中力を「オンにせざるを得ない仕組み」を設けるために、

妹と私はあるものを作りました。


それは「お客さま情報シート」です。

…と言っても、普段使っていた売り上げ伝票の裏に印刷しただけの安っぽいものです。


お客さま情報シート。

ネーミングも思いっきりありふれています(笑)

 

ところが。

この情報シートは最後まで私たちの店を支えた大事な大事な「資産」となりました。


次回はこの情報シートについて詳しく書きたいと思います。

(続きます)



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