塾長ブログ

人の気持ちを察する力。

2015年にこんな事件があったのを覚えている方はいらっしゃいますか。
JRの車内で顔に障がいがある女性を無断で撮影し、インターネット上のSNSに投稿したとして、17歳の女子高校生が書類送検された。
侮辱罪の疑いで書類送検されたのは、札幌市に住む17歳の女子高校生。女子高校生は今年8月、JRの車内で、顔に障がいがある16歳の女性をスマートフォンのカメラで無断で撮影し「笑いとまんない 死ぬ」という言葉とともにインターネット上のSNSに投稿した疑い。

これほどまでに人の痛みがわからないとは…。言葉もなく愕然としますが、これを他人事とは受け止められません。私にも娘がいます。大切な生徒たちもいます。彼らがもし加害者の立場になってしまったら。そんなことは絶対に無いと、どうして言い切れるでしょうか。
差別は絶対にいけないよ。
皆、自分と同じ痛みを感じる人間なんだよ。
子どもにそう話して聞かせることは簡単です。
でも、本当の意味で「教え、理解させる」ことは実は難しいことだと思います。人の心情は目に見えません。人の発する言葉が必ずしも真実とも限りません。自分の心だって時折わからないこともある位なのです。他人のこころなど見えません。人が何を感じて、何に傷付いて、何を求めているのか。
真意は誰にもわからないのです。
でも、人間には推し測るという力があります。自分と言う物差しを基準として、
「自分だったら。だからきっとこの人も……」
「自分だったら。だけどきっとこの人は……」
などと人の気持ちを察することができます。
自分の物差しを使わずに、相手の気持ちを推し測ることができるのが理想ですが、子どものうちはそれは難しいことだと思います。
人の気持ちを察する力は日常生活でも不可欠ですが、国語のテスト(物語、小説、随筆)でもその力は必要です。他者の気持ちを推し測る力が弱いと登場人物や筆者の心情を察することができません。物語や随筆などは「心情把握」が設問のメインです。その心情が読み解けないのは致命的ですよね。
他人の心情は目に見えません。ではどうしたら人の痛みや気持ちを推し測る力が身に付くのでしょう。
まずは日常会話などで、家族が自分の気持ちをこまめに子どもに教えて聞かせることです。
「お母さんはこう思うよ」
「お父さんはこんなふうに感じているんだ」
そんな風に「言葉に出して」子どもに伝えるのです。幼児期から習慣的にそうしていると、
「自分の気持ちと同じだ」
「自分の気持ちと他の人の気持ちは違うんだ」等と体得できるようになります。
そこからがスタートです。
あとは本を読むことですね。心情把握の力をつけるためにはサイエンス系や図鑑、漫画などではなく、物語や小説、随筆(エッセイ)を読んで欲しいと思います。「物語」➡「小説」➡「エッセイ」とステップアップしていくとよいでしょう。これらの本には自分以外の人物の気持ちがぎっしりと述べられています。こんなに最適な「心情把握」の教科書はありません。
選ぶ本にも注文をつけるのなら、ホラーやミステリー、SF、恋愛…様々なジャンルを偏りなく読むことでしょうか。ホラーばかりだと、「恐怖」「怨み」「焦燥感」…などのマイナス感情が偏って描かれていますよね。
感動、悲しみ、喜び、孤独感、苦しみ、解放感、向上心…など、様々な心情を本を通して感じ取って欲しいのです。
ちなみに、私は今『ワンダー』(R.J.パラシオ/ほるぷ出版)という本を読んでいます。
こんな粗筋です。
 
遺伝子疾患により“顔に重度の障がいを持って生まれた少年”オーガストは、10歳にして初めて一般の小学校に通うことになる。その“特別な顔”のせいでいじめに遭ったり、奇異な目で見られたりする中で、家族や先生・親友たちと心から信頼関係を築き、いつしか学園一の愛されキャラに成長する――。
この本を書くきっかけとなったのは、著者のパラシオ氏が子どもたちと外出したときのこと。頭部の骨格に障がいのある少女を見かけた娘(当時3歳)がその少女を見て、怯えて泣き出したそうです。パラシオ氏は、少女を傷つけたくないという思いから、泣いている娘を遠ざけようとします。するとその時、少女の母親が「そろそろ行かなくちゃね」と穏やかに告げてその場を去っていったということです。
パラシオ氏は、自分はあの時どうすべきだったのかを考えました。あの母娘の思いやこれまでに抱えてきたもの。娘が怯えて泣き出したあの時。同じ母親として、自分の子どもたちに何をどう教えるべきだったのか。考え抜いてパラシオ氏が出した答えこそ、この『ワンダー』という本なのです。
本書は児童書ですが、子どもには勿論、私たち大人もお勧めの本ですよ。ただの綺麗事でもない、読んでいて苦しいだけでもない。狭まった自分のこころがグイっと大きく広げられるような1冊です。


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