「とんでもない」という言葉。
「あってはならない」という語義の形容詞で、相手の言葉を強く否定する意味合いの言葉です。
この「とんでもない」。もともとは「途(と)で無し」が語源です。
「途(と=ど)」と言うのは「道」や「道理」という意味で、しんにょうの「道」の表記とはニュアンスが少し異なり、「旅の道」という語義を持ちます。
「途」を使った熟語は多くあり、「途中」「先途」「冥途」「帰途」などの言葉は平安時代にはすでに一般的に用いられていました。
この「途で無し」を直訳すると、「道ではない」。そこから意味が派生して、
●「道から外れている」
↓
●「人の道から外れている」
↓
●「道理に合わない」「間違えている」「あってはならない」
…となり、発音や表記も、
●「途で無し」
↓
●「途でも無い」
↓
●「とでもない」
↓
●「とんでもない」
…と、変わっていきました。
よく誤用として聞かれる「とんでもありません」や「とんでもございません」という言葉。「とんでもない」の丁寧語として巷でも耳にします。
「とんでもない」というのは形容詞なので、語尾の「ない」の部分を「ありません」や「ございません」に変えることは本来できません。
「情けない」という形容詞を例にするとわかりやすいと思いますが、「情けない」を「情けございません」とは言いませんよね?「とんでもない」も全く同じです。
ただ、2009年の文科省の答申書には「とんでもございません」を敬語の1つと見なしますよ、との記載があります。なので文法的には誤用とは言え、使うことは許されている言葉なのですね。
でも私は意識して使いません。大いに違和感があるからです。
なので「とんでもない」を丁寧に言う時には(文面では)、「とんでもないことです」を使います。
会話の時には、「とんでもないことです」はこれまた何となく違和感があるので、「○○○なんて、とんでもない!どうかお気を遣わないでください。」などと、後ろに敬語表現をしっかり使って、さりげなく言い流しています(笑)。