塾長ブログ

忘れない。忘れる。

大切なこと。大切な思い出。
「忘れたくない」ことがあります。

もらった恩。後悔の念。
「忘れてはいけない」こともあります。

「忘れる」という行為には、どちらかと言うとマイナスのイメージが付きまといます。「忘れてしまった…」と他人や自分を非難したり、責めたり、呆れたり。

だけど、人間は忘れる動物です。
忘れないと明日への一歩を踏み出せないこともあれば、悲しみや不安で心がパンクしてしまうこともあります。

例えば、「夢」。夜に見る夢を毎日…しかも何年分も覚えている人はいませんよね。覚えているのは、せいぜい印象に残った夢だけだと思います。全ての夢を記憶として蓄積していると、過去を振り返ったとき、どの出来事が現実で何が夢だったのかわからなくなります。夢とうつつの境界線が不明瞭になるのです。
だから、私たちは見た夢を忘れます。

そして「死」。人間はいつか死ぬ。その自明の理を疑う人はいません。だけど、四六時中、死を強く意識していたら、不安と恐怖で前向きに生きていくのが困難になるでしょう。だから、自分や家族が健康な時は特に、「死」を忘れます。

時に「忘れる」という行為は、人間に与えられた摂理であり、今を生き抜く強さでもあるのです。

ただし、何か忘れてしまいたい辛い出来事があったとして、「よし、今忘れよう!」と本当に忘れ去ることはできません。そんなことは不可能だと思います。「時間薬」が少しずつ、辛い記憶を忘れさせてくれますが、それでも過去の記憶から脱却できないときは、やはり「意識」をすることだと思います。その過去が自分にとって、重い荷物となっていることを。背負っている全ての荷物を下ろすことはできないけれど、あまりに重いと前に進めません。明日からの人生を明るく強く生き抜くためには、忘れなければならないこともあるのです。

忘れることは決して悪ではありません。過去の記憶に縛られず、今この瞬間を精一杯過ごす姿勢こそ、「生き抜く」ことなのだと思います。


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