塾長ブログ

勝手に歌詞解釈シリーズ~「悪女」

久々の、国語講師による「勝手に歌詞解釈シリーズ」。
今回は中島みゆきさんの「悪女」を取りあげてみました。
この曲は私が小学生の頃にリリースされた曲で、当時は深い意味もわからないまま、よく口ずさんでいたものです。

この歌詞に込められた彼女の気持ち…何とも切ないのですよ。私自身も過去に似たような経験があるせいか、身に沁みて理解できます。まさに名曲だと思います。

こんな歌詞です。まずは読んでみてくださいな。

「悪女 (中島みゆき・ 1982年)」

マリコの部屋へ 電話をかけて
男と遊んでる芝居 続けてきたけれど
あの娘(こ)もわりと 忙しいようで
そうそう付き合わせても いられない

土曜でなけりゃ映画も早い
ホテルのロビーも いつまで居られるわけもない
帰れる当ての あなたの部屋も
受話器をはずしたままね 話し中

悪女になるなら 月夜はおよしよ
素直になり過ぎる
隠しておいた言葉 
ホロリこぼれてしまう(行かないで)

悪女になるなら 裸足で夜明けの
電車で泣いてから 
涙ホロホロホロホロ
流れて 枯れてから

女の付けぬコロンを買って
深夜の茶店(さてん)の鏡で うなじに付けたなら
夜明けを待って 一番電車
凍えて帰れば わざと捨て台詞(ぜりふ)

涙も捨てて 情けも捨てて
あなたが早く 私に愛想をつかすまで
あなたの隠す あの娘のもとへ
あなたを早く 渡してしまうまで 

⬛プロローグ
語り手(仮に『アタシ』とします)には半同棲している恋人がいます。だけど、どうやら彼には、他に好きな女性ができたようなのです。アタシは彼のことを心から愛しています。愛し過ぎているがゆえに、自分から彼に「さよなら」なんて言うことができません。いっそのこと思いきり嫌われて、彼のほうから自分を振ってほしいと望みます。そこでアタシは彼の前で「悪女」を演じ始めるのでした。

⬛歌詞解釈
「悪女計画」のひとつ。友達のマリコに協力してもらって、彼の前であたかも他の男と意味深な電話をしているフリを続けてきた。「もしもし、けんちゃん?土曜日空いてる?またあの店に行こうよー♪」みたいな(実際にはマリコと話している)。
『アタシもあなただけじゃないのよ。遊ぶ男は他にもいるんだから』彼にそうアピールするために。

…だけど、忙しいマリコを付き合わせてばかりいるのも気が引ける。今回は朝帰りをして彼に嫌われる作戦でいこう。

さあ、どうやって朝まで時間を潰そうか。映画館は早く終わってしまうし、ホテルのロビーで人と待合せする風で粘ってみても、そうそう長居もできないし※。

彼が部屋にいなければ計画が台無しになる。いることを確認したらすぐに切るつもりでかけた電話だったけれど、何度掛けても話し中だ。私がいない夜。きっと彼女と長電話でもしているのかもしれない。

彼の前で悪女を演じきろう。
そう決めたけれど、月の出ている夜はダメね。月の光に照らされて、あなたを愛して愛して仕方ない、弱い女のアタシが顔を出す。
「彼女のもとに行かないで」
「私のそばから離れないで」
そんな本音が、つい口をついて出そうになる。

涙を流しきってから、もうこれ以上泣けないぐらいに泣いてから、アタシは「悪女」になるんだ。

時間を潰すために入った深夜営業の喫茶店。そこのトイレで男性用のコロンをつける。「今まで男と会っていましたよ」と印象付けるため。男の移り香と思わせるための小細工だ。

そして明け方。ようやく始発電車の時間になって、彼の待つ部屋へ向かう。朝帰りしたアタシは冷淡な口調で言ってやるんだ。「…どこって、男の家に泊まって来たの。別にいいでしょ。」

アタシは悪女を演じ続けるよ。
涙も、あなたへの愛も捨て去って、
あなたがアタシを大嫌いになるまで。
隠しているその彼女のもとに、あなたを行かせてあげられる、その日まで。
全ては愛するあなたのために。

※今ならネットカフェで始発電車を待つのでしょうが、この曲が発売された当時はそんな便利なお店はなかったのです。


メール

お問い合わせ

塾に関するお問い合わせ・ご相談はこちらから。

シェイプ
カレンダー

スケジュールカレンダー

各校のスケジュール確認はこちらから。

シェイプ