これから、2つの文章をご紹介します。
どちらも、頭の中で「情景」をイメージしてみて欲しいのです。
それでは始めますね。
①
あなたは夕食を食べるため、自宅の食卓テーブルの前に座っています。
その日、テーブルには真っ白いテーブルクロスが敷いてあって、その上には料理が置いてあります。
淡いベージュ色した小皿には、焼きたてのパンが二個。
深めの白い器には、熱々のホワイトシチュー。
どちらも、とても良い香りがします。
パンはフランスパン生地のレーズン入りのものです。
シチューの中には、ニンジン、ブロッコリー、じゃがいも、鶏肉が、いずれも少し大きめに切られて入っています。
あなたはテーブルの上にあった銀のスプーンを手にとり、シチューを口に運びました。
でも、ものすごく熱くて舌を火傷してしまいました。
…イメージできましたか?
では次もやってみてください。
②
あなたはカフェで、窓の外を見ながら食事をしています。
そこに、1人の子どもが通りました。
不思議な雰囲気を持つ子どもです。
人間ではないような、異様な感じのするその子どもが気になりました。
そこであなたは、食事を切り上げて急いで外に出ました。
ところが、周りを見渡しても子どもの姿はどこにもありません。
そこは民家も無い寂しげな一本道。
一体どこに子どもは消えてしまったのでしょうか?
その時です。
あなたはふと思い出しました。
小学生のときに信じていた「子どもの妖怪」のことを…。
…どうでしたか?
①と②、どちらの文がより鮮明にイメージできたでしょうか?
①のほうがイメージできた方、逆に②のほうだと言う方、またはどちらも同じくらいイメージできた方…
それぞれいらっしゃると思います。
各文章の特徴を簡単に挙げると次のようになります。
①は「具体的」で細部まで詳しく説明が書かれている。
②は「抽象的」で具体的な情報は乏しい。
①はテーブルクロスの色や、シチューの具材など、細かいところまで描写されています。
なので想像しやすかったのではないでしょうか?
一方、②は最低限の情報しか与えられていません。この場面の「時間帯」や「子どもの性別」などなど、細かいところの説明は書かれていませんね。
あなたはどの時間帯をイメージしましたか?子どものイメージは男の子?それとも女の子?
カフェの周りの風景はどんな感じで、思い出した妖怪はどんなものでしたか?
きっと、1人1人違うと思います。
①のように、対象を「具体的」に書く(話す)ことのメリットは、読み手に大きな相違なく、同じイメージを与えられることです。また、内容をイメージしやすいので文章に「活き活きとした印象」を与え、また、文の内容に「説得力」を加えることもできます。
逆に、②のように「抽象的」に書く(話す)メリットもあります。
説明が具体的ではないために何通りにも解釈が可能です。その結果、イメージが固定されず、「のびのびとした自由な想像」を読み手に許します。
抽象的だけあって、読み手は類推力(推理力)をフル稼働させるので、「行間を読む」楽しさや満足感を与えることができます。
自分で文章を書く(話す)時には、上記どちらの効果を狙いたいのかによって書き分けをするとよいでしょう。
一方、人の書いた文章を読む力…いわゆる読解力…をつけたい場合には、両タイプの文章を数多く読むことです。
具体的な文章の代表例としては「新聞記事」「取り扱い説明書」「レシピ」「エッセイ(随筆)」などがあり、
抽象的な文章の代表例としては「小説」などがあります