誰かと会話をしていて、「そう一言、言ってくれたら…」と感じることはありませんか?
たった一言が足りなかったために、誤解や混乱を招くことも多々あるものです。
言葉が足りない時は、相手への配慮も足りない時です。必要な伝達事項や、「ありがとう」「助かったよ」などといった感謝の言葉を一言足すだけで、トラブルや面倒を回避できることがあります。また、相手の心がふっと軽くなることもあります。
その一方で、人と会話をしていて、「一言多いよ」と感じることもあるのではないでしょうか。言わなくても良いことを敢えて口にするときは大抵、『言わないと自分の気が済まないから』という、ただそれだけの理由だったりします。
つい余計な一言を発してしまう時は、「意識のベクトル」が自分にのみ向いている時です。感情の昂じるままに非難や愚痴、嫌味の一言が口を衝いて出てしまう。何かを強く人に伝えたいときは、言いたいことを客観と主観に分けて淡々と冷静に話すほうがよほど効果的です。心に波風を立てるような一言を言うと、相手も意固地になって素直に聴く耳が持てなくなり、結局は逆効果に…。ぐっと我慢し、落ち着いて丁寧に伝えたほうが、地中に水が染み込むようにすーっと言葉が入っていくものなのです。
一言足りない。
一言多い。
両者に共通しているのは、詰まるところ「想像力」と「思いやり」の欠如だと私は思っています。
…とは言え、頭ではそう分かっていても失敗してしまうのが人間というものです。かく言う私も、まだまだ言葉で失敗することだらけ。数ヶ月前にも、言わなくていいことを口にして相手を傷つけてしまいました。その時は「相手のことを思っているから心を鬼にして伝えているのだ」と強く信じていましたが、時が経った今は思います。それは本当に得策だったのだろうか。ただの自己満足だったのではないか、と。
言葉の世界で生きているという仕事柄、「人間だもの」と開き直る気はさらさらありません。失敗と反省を繰り返しつつ、少なくも多くもない、相手の心にしっかり届く「ちょうどいい」言葉がけを目指して切磋琢磨していきます。