ピンポーン。
チャイムの音で出て行くと、玄関の外に小さなお客さまが立っていました。
ケンジくん。
勤めていた学習塾の教え子で、当時小学3年生です。
その日は私の誕生日
プレゼントを渡すため、わざわざ私の家を訪ねてくれたそうです。
夜の9時にたった1人で…!!
ケンジくんの家は私と同じ団地の中にありましたが、子供の足で片道20分はかかる距離です。
よほど不安だったのか、ケンジくんは目にいっぱい涙を溜めています。
私が出て行くと、
「……ん!」
と、ぶっきらぼうな感じで、後ろ手に持っていた箱を差し出してきました。
「えっ?何?プレゼント?先生にくれるの?……ありがとう!!」
ケンジくんに促されて箱を開けると…
手作りのホットケーキが
チョコで私の顔らしき絵が描かれています。
感激して言葉が出ない私に、ケンジくん。
「生クリームのかわりに、ジャムをぬった」
私は生クリームが苦手です。
何かの時にそう話したのを覚えてくれていたのでしょう。
思わず、ケンジくんをぎゅっと抱きしめてしまいました。
「ホットケーキを作るの、ケンジは初めてだったんですよ。2時間半かかってやっと完成したんです(笑)」
送って行った際に、玄関口でお母さんが囁くようにこっそり教えてくれました。
家に戻ってホットケーキを食べてみたら…。
うん、おいしい!
私のために一所懸命作ってくれた、その気持ちが美味しさを倍増させます。
そして、同封されていた手紙にはこんな言葉が…。
「先生、おたんじょうびおめでとう。ずっとぼくの先生でいてね」
…嬉しくて嬉しくて。
口の周りをチョコとジャムで汚しながら号泣したのを、十数年経った今も覚えています。
教える仕事っていいな。
これからもずっと「先生」でいたいな。
心からそう思ったHappyバースデーでした