名残(なごり)は「余波」とも書きます。
物事が過ぎ去ったあと、その影響がなおも残っているという意味の言葉です。
語源としては、「波残り(なみのこり)」が縮まったものだと言われています。波が去ったとき、砂浜には藻屑や木枝などが残りますよね。転じて、何かが終わった時、去った時に胸の中に残る感情を指して「なごり」と言うようになりました。
何かが終わった後、胸に残るのは何でしょう。
一抹の寂しさ
あたたかな温もり
ふわっとした幸福感
いずれにせよ、悲しみや喜びなどの「強い感情」ではありません。楽しく満ち足りた時間がまだ尾を引いているような、もっとずっと続けばいいのにな…と振り返って溜息をついているような、そんな感じかな。
名残は割と短い時間の感情のイメージなのですが、それが長期化して諦めきれない気持ちが強くなると「未練」という言葉に変わります。
既に奈良時代には、
夜のなごり
かの人のなごり
などと使われていたので、かなり古い言葉の1つです。それでも意味合いがほとんど変わることなく、時代の波に押し流されて消えてしまうこともなく、令和の現代でも用いられています。
時が流れて、私たちを取り巻く環境は大きく様変わりしました。でも人間のこころの根底は変わっていません。人を恋しく思う気持ちや、我が子を愛する気持ち。朝の空気を清々しく思う気持ちや桜の花や紅葉に惹かれる気持ちなども、無常の世界に在る「不変」です。
名残という感情もその1つなのだと思います。