先日実施された日本語検定(3級)で、こんな設問が出題されました。皆さんも一緒に考えてみてください。
【母の勤め先からの電話で、不在の母への伝言を頼まれて】
承知いたしました。母に( )おきます。
1 おっしゃって
2 申し伝えて
3 申し上げて
母に伝えるのは話し手である「私」。自分の動作に尊敬語は使いません。だから1の「おっしゃる(尊敬語)」は✖。
となると、2か3のどちらかですね。
ちなみに2も3もどちらも謙譲語。自分サイドの動作を低めて、動作の受け手(~に/~を…にあたる人物)を高めるという敬語です。
3の「申し上げて」でしょうか。
仮にそうだとすると、
母に申し上げる
と、話し手である私が、動作の受け手(言われる人)である母を高めることになってしまいます。
なのでこれも✖です。
正解は、「申し伝えて」となります。
母に申し伝えます
当然ですが、身内の母に敬意を表している訳ではありません。でも、どうでしょうか。一見すると、母を高めているように感じられませんか。
「申す」は謙譲表現なので、話し手の私が、動作の受け手である母に敬語を使っているように感じて、一瞬混乱しがちです。
でも、この「申し伝える」は、
あなたのお言葉を母に伝えます
と言う意味合いです。この「申し伝える」は、謙譲語の仲間ではありますが、正確に言うと丁重語と言って、自分の身内に対して言伝(ことづて=伝言)することを目上の人間に約束する時に使う敬語なのです。
小難しく書きましたが、
★「申す」と「申し伝える」は異なること
★取引先や目上の人から、自分の身内(家族や社内の人間)に対しての伝言を頼まれた際には、
「申し伝えます」「申し伝えておきます」を使うこと
この2点を覚えておくと良いでしょう。