負けず嫌い
という言葉がありますよね。
今の感覚で解釈すると、
負けず→負けない
嫌い→イヤだ
負けないのがイヤだ、つまり、「負けたい」という意味に受け取れてしまいます。
でも、実際の意味は逆ですよね。
「負けず嫌い」は、「負けるのが嫌い」という意味の言葉です。
…ん?
これはどういうこと?
それなら「負け嫌い」でいいじゃん。
「ず」って何??
これが私が古典文法に興味を持ち始めたきっかけでした。高校2年生の時です。
小学生の頃から私は言葉に対する興味が強く、叱ると怒るの違いとか、愛と恋の違いとか、辞書で調べてはニヤニヤしているような子でした(笑)。特に語源が好きで、
「この言葉はいつから使われていたの?」
「この言葉の元々の意味は何?」
などと、疑問を持っては調べたものでした。
話は戻して、この「負けず嫌い」。
多くの辞書では「負け嫌い」や「負けじ魂」が混同して出来たという説が載っています。また、方言の「負け+むず(うず)+嫌い」が転じて「負けず嫌い」になったという説もあります。この場合の「むず」は「むとす」が縮まった形。「むとす」が縮まって「むず」という推量または意志を表す助動詞になりました。この場合、「負けようとするのが嫌い」という訳になり、現在の意味と変わらないものになります。
私も沢山の文献にあたり、文法を徹底的に調べた結果、後者の意見に賛同していますが、実際は国文学者の間でも何が正解なのか、未だ決着がついていません。それでもこうしてあれこれ考えることに意義があると私は思っています。少なくとも私は、この1つの言葉を追いかけたことで、古文が好きになり、数十年経った今でもそれを仕事にしていますからね。
本もそうですが、ある「言葉」と出会ったことで、人生に大きな影響を与えることがあります。私も国語を教える人間として、こころに響く言葉を届けられたらいいな。そう思いながらいつも生徒たちと接しています。