私が他塾で講師をしていた時のエピソード。
当時小学2年生だったAちゃんは母子家庭。
お母さんが昼から夜中まで勤めに出ていたそうです。
生活が苦しくなったのでしょうか、塾の月謝を半年以上滞納してしまいました。
そのため、ついに退塾することに…。
最後の学習日。
Aちゃんを迎えに来たお母さん。
彼氏のような男性と一緒です。
滞納していたことには一切触れず、もちろん謝罪もせず、
一方的に塾を辞めさせられたことに腹を立てている様子でした。
「こんなに通ったのに、結局は成績が上がらなかった」
「塾の都合で辞めさせられるなんて、子どもが可哀想で仕方ない」
「来月払うって言っているのに、待ってくれないって…。アンタは鬼か!?」
そんなことをしきりに言っています。
なんて理不尽な…。
どんな事情があったにせよ、怒りの矛先を塾側に向けるのは筋違いです。
口から唾を飛ばしながら文句を言うこと10分。
「ほら、行くよ!」とAちゃんを促し、お母さんと彼氏は不機嫌な顔で玄関の方へ行ってしまいました。
バッグに問題集と筆箱を入れて、慌ててお母さんを追いかけるAちゃん。
彼女はドアの前で立ち止まり、小さな頭を深々と下げてこう言ったのです。
「…ごめんなさい。」
本来は母親が言うべき言葉。
小学2年生の子どもが塾長に頭を下げるなんて…。
本当にやりきれない思いでした。
あの時のAちゃんの表情を思い出すと、今でも胸が痛みます。