母が亡くなるまで、私はどちらかと言うと落ち込みやすく、ネガティブな考え方をする人間だったと思います。だけどある日突然、母が私たちの前からいなくなったことで、自分の中の世界観が一変しました。単純に表現すると、
「生きているうちに、やりたいこと、やるべきことをやり抜こう。落ち込んでいる時間なんか無い。」
そう強く思うようになったのです。
考え方が変わると、生き方が変わりました。生き方が変わると、取り巻く環境が変わりました。
仕事に関して言うと、自分の為すべきことがわかり、一事に猛烈に集中するようになりました。それまであちこち迷い道していましたが、「間違えても構わない」と開き直って、信じた1つの道を、前だけ見つめて歩き始めたのです。
恋愛スタイルもがらりと変わりました。悲喜交々人生を共にする相手が欲しいと心から思うようになりました。いつも周りには多くの男友達がいましたが、どこか心が満たされない自分がいました。
それも、母の死をきっかけに気持ちが動き出します。当時は単なる「感じの良い同僚(先輩)」だった今のダンナを、結婚対象として意識するようになりました。今まで付き合ってきた人とはまるで異なる、私には無いものを全て持っている人です。一緒にいると自然と笑顔になれる穏やかで明るい彼と、付き合って2ヶ月で結婚を決めました。石橋を叩いて渡る私にとっては、随分と思いきった決断だったと思います。
……今、この時を大切に生きよう。
苦しみ、悲しみ、寂しさ、不安。誰の心にも忍び込む暗い感情にあえて焦点を当てず、嬉しさ、喜び、感動、幸福感…。明るい感情に意識して目を向けるようにしよう。
苦悩が人生の糧になることに異論はないけれど、悩み抜いて生きることよりも、毎日を笑って生きるほうがずっと難しく、はるかに人間力が必要なことなのだ……
そう考えるようになってから、実際に「明るい」方向へ人生が動き出した気がするから不思議です。
母との身を引き裂かれるような死別の先にも、こうやって道ができました。今の幸せに感謝しながら、今日もまた一歩を踏み出そうと思います。