「上手な作文」とは、誤字脱字が無い作文を指す訳ではありません。文法の乱れがない作文でも、文字が丁寧に書かれているものでもありません。
私が思う「上手な作文」とは笑いや感動など、読み手の心を揺り動かすような作文のことを言います。
次の作文を読んでみてください。
野幌森林公園に遠足に行きました。その日は暑かったので、汗をたくさんかきました。でも、森林の中はすずしくて歩きやすかったです。班の人たちとおしゃべりをしながら、ゴールまで歩きました。なかなか到着しないので、途中であきらめそうになりましたが、全員ゴールできて嬉しかったです。
文法的な間違いはありません。そつなく仕上げた作文になってはいます。ただ、読み手の心を動かすまではいかないのではないでしょうか。
その理由は、この作文が単なる「報告文」になっているからです。つまり、起こったこと(事実)ばかりを述べているので、この書き手の表情が見えないのです。これだと、作文を書いたのがAちゃんでもBちゃんでも変わらない、個性のない作文とも言えます。
この作文を次のように書きかえてみます。
歩いても歩いても目に映るのは緑、緑、緑。隣を歩く真樹ちゃんが「もう歩けない…。」と小声でつぶやいた。後ろの大輔くんもはあはあと息を切らしながら、「ゴールはまだか~!」と情けない声を出している。そういう私もそろそろ限界。足が石のように重くなってきた。だけど止まるわけにはいかない。さーっ。時々、木々を揺らして駆け抜ける涼しい風が「頑張れ、もうすぐだよ」と励ましてくれる気がする。
もうどれぐらい歩いただろう。突然、「あっ!」と先頭を歩く勇樹くんが叫ぶ。足元ばかり見ていた顔を上げると、「お疲れさま!!」と大きく手を振る坂本先生の笑顔が見えた。
先程の作文と比べると、臨場感が増したのではないでしょうか。「私」が限界を感じながらも、仲間たちと一緒にゴールを目指す様子がありありと浮かんだのではないかと思います。
二つの作文の違い、わかりますか?
前者は事実だけを客観的に述べているのに対し、後者は「自分の目に映ったこと」を主観的かつ具体的に述べています。つまり後者は、書き手だけにしか書き得ないことを記しているのです。
●最も印象的だった場面を切り取って書く。
●周りの人との会話、周りの人の様子を具体的に書く。
●自分が直接見たものや感じたことを詳しく書く。その時に比喩(たとえ)を使うと個性的な作文になる。
●まとめの言葉を「楽しかったです。」「おもしろかったです。」などの月並みな言葉で締めない。文末ではあえて、情景や事実を述べて読み手に心情を想像させる。
例)
・気持ちの良い汗がほおを伝った。
・こんなに笑った日は初めてだった。
まだまだポイントがありますが、これらに留意して作文を書くとよいでしょう。