塾長ブログ

タブー視されるけれど。

「この社会はきれいごとがあふれている。人間は平等で努力は報われる…それらは絵空事だ。往々にして、努力は遺伝に勝てない。」

橘玲 著「言ってはいけない」(新潮新書)の一節です。

本著では、データを元に「血統遺伝」について述べています。「親から子へ知能や才能や容姿は遺伝する。それは決して無視できない事実だ。」という要旨です。

例えばこんなデータが掲載されていました。

遺伝率について…
認知能力
●学業成績 55%
●論理的推論力 68%
●一般知能 77%

性格
●誠実性 52%
●固執性37%
●新奇性追求 34%

才能
●音程80%
●音楽92%
●美術56%
●執筆83%
●数学87%

疾病など
●自閉症82~87%
●ADHD 80%
●アルコール依存54%
●喫煙58%

数年前、私は健康に関する仕事もしていたことがあり、多くの医者や大学教授と話す機会がありました。彼らがしばしば「遺伝率」の話を持ち出していたことを思い出します。

親から子へ、顔つきや身長、体型に関することはその遺伝の事実を疑わないのに、学力や才能については、
「努力次第でどうにでもなる。血なんか関係ない!」
というような根性論に辿り着くことに、私も少々違和感を持っていました。知り合いの医師たちも「積極的に口に出しはしないけど、病気も学力も才能も、遺伝によるものがやっぱり大きいのではないか。」と話していたのを今でも覚えています。

それがよいとか悪いとかではなく、現実なら受け入れて対策を講じる必要があると思うのです。
「能力に遺伝は全く関係ない」
「遺伝??だったら、教育も努力も何もかもが無駄だということなのか?」
と極論を言ったり、必要以上に感情的になったり、遺伝の話を持ち出すこと自体をタブー視したりする傾向が、私たちの国では多少なりとも確かにあるのではないでしょうか。

私も遺伝の話を積極的に持ち出す必要性を感じませんが、まるきり無視はできない問題だとは思っています。

遺伝の話をすると、私には大きな恐怖があります。わたしの亡き母と伯母が脳の難病「モヤモヤ病」であり、遺伝する確率が高い病気だと言われています。なので、今は2年に一度私もMRIを撮影するために受診しています。自分はよくても、娘に遺伝するかもしれないと考えると不安で不安でたまりません。
それでも、その現実から目を背けたり蓋を閉じたりしないようにしています。

他にも、数学が苦手なのは遺伝して欲しくないなあとか、運動神経が鈍いのもどうか似ませんように…などと祈っています。どちらもダンナは得意なので、そっちに似て欲しいとも思います…(残念ながら、性格は日に日に私に似てきている感じです)。

ただ、例えば遺伝率58%だとすれば、残りの42%は環境因子や本人の努力に拠るものだと言うことですよね。遺伝子の特別変異などというものもあるかもしれません。
遺伝子の話を安易に持ち出して努力を放棄し、開き直るのは賢明とは言えません。人間としてどうかとも思います。

ただ、現実を直視する必要はあるということです。自分のことを棚に上げて子どもに無理難題を押し付けたり、子どもの心が壊れてしまうような過度な期待をしたりするのはどうかなあと私は思っています。


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